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2012年3月16日 第100回労働政策審議会労働条件分科会 議事録

第100回労働政策審議会労働条件分科会 議事録
下記は、国会に提出した改正労働契約法案の審議会の最後の議事録です。

2012年3月16日 第100回労働政策審議会労働条件分科会 議事録
労働基準局労働条件政策課

○日時
平成24年3月16日(金)
13:00~14:30

○場所
中央合同庁舎5号館9階 省議室(東京都千代田区霞が関1-2-2)

○出席者
【公益代表委員】

荒木委員、岩村委員、権丈委員、田島委員、山川委員

【労働者代表委員】

工藤委員、島田委員、新谷委員、?松委員、中島委員、春木委員、宮本委員

【使用者代表委員】

池田委員、伊丹委員、伊藤委員、田中委員、三浦委員、宮地委員、輪島委員

【事務局】

金子労働基準局長、熊谷審議官、前田総務課長、田中労働条件政策課長、青山労働条件政策課調査官

○議題
1 「労働契約法の一部を改正する法律案要綱」について
2 その他

○議事
○岩村分科会長 定刻となりましたので、ただいまから第100回「労働政策審議会労働条件分科会」を開催いたします。
 本日の委員の出欠状況ですが、公益委員の村中委員、守島委員が御欠席と承っております。
 また、労働者代表の工藤委員は遅れて御出席されると承っております。
 議事に入ります前に、定足数につきまして、事務局から御報告をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○青山調査官 定足数について御報告いたします。
 労働政策審議会令第9条により、委員全体の3分の2以上の出席、または公労使各側委員の3分の1以上の出席が必要とされておりますが、定足数は満たされておりますことを御報告申し上げます。
 以上です。
(報道関係者退室)
○岩村分科会長 それでは、議事に入ります。お手元の議事次第に沿って進めてまいります。
議事次第にあるとおり、本日の議題は「(1)『労働契約法の一部を改正する法律案要綱』について」です。前回の分科会において、法律案要綱につきまして厚生労働大臣から諮問を受けて、御議論をいただきました。そして、各側から持ち帰って検討する旨の御発言もいただいたところです。本日は、前回に引き続いて、この法律案要綱について御議論を頂きたいと思います。それでは、御意見、御質問があればお願い致します。
 それでは、?松委員。
○?松委員 ありがとうございます。
 前回行われました29日の分科会においても、我々労働側として、懸念される内容の幾つかについて御質問をさせていただきました。大変重要な法案でもありますので、再度幾つかの点についてお尋ねをしたいと思っています。
 第一に、無期転換の申し込みの期間についてでございます。無期転換の申し込み期間について、今回の要綱では「契約満了日までの間」という言葉が記載されていますが、この文言は建議にはなかった文言でございます。したがって、どうもそこのところがすとんと落ちないというか、なかなか理解できないところでございます。法文上明記することがいいことなのかどうなのかというところは、いまだに疑問に思っております。できれば法文上明記せずに、個別紛争等々が起きた場合については、個々の事例ごとに裁判官の判断に委ねた方が適当ではないかという思いもしているところでございます。
 加えて、権利関係の構造が異なっているわけでありますが、労働者からの申し出という点においては、改正労働者派遣法案の違法派遣の場合の直接雇用申し込みみなし規定では、違法行為終了後、1年間は申し込みの撤回はできない、あるいは労働者の承諾期間も1年間とされております。したがって、法政策上のバランスも考えるべきではないかと考えておりますので、お考えをお聞かせいただきたいと思っています。
 以上です。
○岩村分科会長 ありがとうございます。
 田中課長、お願いします。
○田中労働条件政策課長 この要綱の第一の規定は、労働者の申し込みという一方的な行為で、無期労働契約への転換という強力な効果を生じさせるものでございます。このような規定を制定法化する場合には、無期転換が生じるか否かという法律関係が不安定な状況がいつまでも続かないようにするため、また労使当事者間で法律関係がきちんと決められるようにするためにも、請求期限を明確化する必要があると考えています。
 なお、労働者による無期転換の申し込み権は、通算5年を超えることとなる労働契約の開始した当初、初日に生じまして、その契約期間中存続いたしますので、権利行使の期間としては十分な期間が確保されていると考えております。
 あと、御質問のありました、労働者派遣法改正法案の違法派遣の場合の直接雇用の申し込みみなしの規定であります。この規定では、労働者の承諾期間は、違法行為終了後1年間となっております。使用者は1年間申し込みを撤回できないということでございますが、この規定は違法派遣が行われた場合、派遣労働者の雇用が失われないようにしつつ、違法派遣を是正することによりまして、派遣労働者の雇用の安定を図るとともに、違法派遣を受け入れた派遣先に対する一定の民事上のペナルティを科すものとして、改正法案に盛り込まれたものでございます。一方、今回の労働契約法での無期転換ルールでは、5年を超えても有期労働契約の適法性に問題はございません。申し込み権の行使期間が異なっていても、法制上のバランスを欠くことにはならないと考えております。
 厚生労働省といたしましては、有期契約労働者が5年を超えて雇用されれば、無期化の権利を得られる。その契約の満了日まで行使できることを労働者に十分知っていただけるように、労使とも連携を図りながら、わかりやすいパンフレットを作成、活用するなどによりまして、制度の周知を徹底したいと考えております。その際、併せまして、モデル労働条件通知書を活用することができないかについても、検討していきたいと思っております。
 以上でございます。
○岩村分科会長 ?松委員、いかがでございましょうか。どうぞ。
○?松委員 考え方についてはわかりましたが、前回もお願いしましたとおり、どこまで関係者に理解が図られるかということだろうと思っていますので、今もパンフレット等による周知徹底というお話がありましたが、それに向けて全力で取組みをお願いしたいと思っています。
 以上です。
○岩村分科会長 事務局におかれましても、今の要望を是非受け止めて、積極的に広報をお願いしたいと思います。
 ほかにいかがでございましょうか。島田委員、どうぞ。
○島田委員 ありがとうございます。
 今回は労働契約法の改正ということになっております。多分、条文を追加していくのだと思っておりますが、もう既に労働契約法がある中で、今回の3つの条文を追加したときに、何となく今までの契約法の書き方とちょっと違うような感じがいたします。そういう意味では、もう少し簡潔に書いていただいた方がよいと思っています。
 特に、第一の二については、括弧がいっぱいありまして、二重括弧にまでなっているんですけれども、理科系の私から言えば、括弧が2つあったら計算がしづらくなるみたいに、少々難しいんです。そういう部分があるので、複雑だということです。
 もう一つは、多分法律文の書き方のルールがあるんでしょうけれども、もう少し細かく書き分けることもできるのではないかと思いますし、本来、法律は、我々法律に関わる人たちが読んで、それを理解して守ろうという世界なので、法律家が読んでわかるのは構いませんが、一般の人も読んでわかるような書き方にしないと、多分守られないのではないか。先ほど言われた部分もそうですけれども、周知徹底するためには、わざわざ法律を解釈し直して、もう一遍、わかりやすく書かなければいけないんだったら、その法律というのは、要するに法律の専門家しか読めない世界です。そうではなくて、一般の方が読めて、それでもわからない部分を解釈するのが本来だと思っています。
 そういう意味でいったら、特にこのまま条文、法律になるとしたら、第一の二についてはどう理解すればよいのか。自分自身読んでいて、一つひとつ線を引きながら理解していかなければいけないような感じですから、これを変えられるんだったら、変えていただいた方がよいと思います。
○岩村分科会長 ありがとうございます。
 田中課長、お願いいたします。
○田中労働条件政策課長 第一の二の部分での御指摘でございます。条文をわかりやすいものとすることの重要性につきましては、事務局としても全く同じ思いをいたしております。その一方で、紛れや誤解のないように、正確に記述することは不可欠でございまして、そのために複雑で読みにくい記述となってしまう面もございます。
 問題の第一の二、法案要綱の1ページ目の後ろ3行目から始まる部分でございます。第一の二につきましては、御指摘も踏まえて、実際の条文にするに当たっては、より短く、読みやすい記述となるように検討いたしております。
 例えば諮問案の二の文章のうち、1行目の下の方に「満了した日以後最初に到来する当該使用者との間で締結された有期労働契約」とあり、その後ろに括弧で「以下二において『次契約』という」といった表現がございます。こういった表現は非常にわかりにくいので、この表現を「満了した日と当該使用者との間で締結されたその次の有期労働契約」といったように、法令として可能な範囲でわかりやすい表現に見直すことを検討しております。
 また、要綱案の中では契約と契約との間を空白期間と呼ぶことにして、その定義をしておるわけですけれども、現在の諮問案では、2ページの5行目に空白期間というものを定義しております。この文章では、6か月以上の長さの空白だけを空白期間と称することにして作成をしておるわけですけれども、わかりにくさがありますので、この定義を見直して、契約と契約の間に隙間があることを空白期間と定義するように、改めるようなことを検討しております。こういったことを含めて、更に精査を重ねまして、法律案を作成させていただければと考えております。
 なお、法案成立後は、解釈通達やパンフレットにクーリング期間の考え方を図や矢印で示すなど、わかりやすい周知に取り組んでまいりたいと考えております。
○岩村分科会長 島田委員、いかがでしょうか。よろしゅうございましょうか。
○島田委員 はい。
○岩村分科会長 輪島委員、どうぞ。
○輪島委員 ありがとうございます。
 島田委員の御指摘のとおり、私どもも読みにくいと思っておりますので、その点で法文の工夫については、是非御配慮いただきたいと思っております。
 また、法文も大事なんですけれども、クーリングの期間の説明そのものがわかりにくいことについても問題があると思いますので、できるだけ仕組みをわかりやすく解説していただきたいと思いますし、現場に混乱がないような形で周知をしていただくことが必要なのではないかと思っておりますので、御配慮いただきたいと思っています。予算が少ないような感じがしますけれども、是非集中的に周知をお願いしたいと思っています。
○岩村分科会長 ありがとうございます。
 田中課長、お願いします。
○田中労働条件政策課長 施行前にしっかり周知すると同時に、すべての有期労働者の方々、個人も含めてそれを雇用する方々にしっかりわかっていただく必要があると思いますので、そこは創意工夫を重ねながら、努力してまいりたいと思います。周知予算もある程度しっかり取っているつもりでございますので、十分活用しながら、やっていきたいと思います。
○岩村分科会長 輪島委員、よろしゅうございましょうか。
○輪島委員 はい。
○岩村分科会長 新谷委員、どうぞ。
○新谷委員 今、第一の二の書きぶりについて論議がありまして、この分科会では余り労使の見解が一致することはないんですけれども、今、使側の委員からも御発言がありましたように、非常にわかりにくい文章でありますので、今後パンフレット等については、図解で書いていただく等々、これを活用する労働者が見てわかるようにしていただきたいと思っています。これは本当に重要な部分だと思っておりまして、無期転換への権利が発生するのか、空白期間が設けられるのかという重要な部分でありますので、周知徹底をお願いしたいと思っております。
 それと、実態の問題として、空白期間の扱いについて、前回も懸念として申し上げたところでありますけれども、無期化を免れるために、例えば直接雇用の有期労働契約であった方を、同じ事業所に派遣労働者として受け入れる、あるいは構内下請のような請負形態に切り替えて、同じ仕事に従事させるようなケースです。形式的には使用者が変わることで、労働契約の主体が変わることになりますが、そういった潜脱が起こらないかという懸念があるわけです。こういったケースについて、無期転換の通算期間のカウントはどのような扱いになるのか。当然ですが、脱法行為でありますので、クーリングされないという理解でおりますけれども、事務局の考え方をお伺いしたいと思います。
○岩村分科会長 田中課長、お願いします。
○田中労働条件政策課長 周知の点につきましては、先ほども申し上げましたとおり、法案成立後は解釈通達やパンフレットにクーリング期間の考え方を図や矢印で示すなど、わかりやすく周知に取り組んでまいりたいと思います。
 それから、今、御指摘の直接雇用の有期契約から派遣、請負に切り替えての雇用の問題でございます。無期転換ルールについては、要綱でいきますと、第一の一で御提案させていただいておるものでございますが、そこにもありますとおり、同一の使用者との間で締結された有期労働契約とあります。本来、労働者を使用する法人単位で契約期間を通算する仕組みなんですけれども、同一企業において、無期化を免れる意図の下に、実態が変わらないまま派遣形態や請負形態を偽装して、形式的に使用者を変えたにすぎないと認められるようなケースにつきましては、法律を潜脱するものとして、通算契約期間としてカウントされるべきものと考えております。通算で5年を超えれば、無期転換の申し込み権が生じるものと考えているところでございます。
○岩村分科会長 新谷委員、よろしいでしょうか。
○新谷委員 はい。
○岩村分科会長 ありがとうございます。
 そのほかにいかがでしょうか。輪島委員、どうぞ。
○輪島委員 今の点でもう一度確認ですけれども、無期転換ルールのそもそもの原則というのは、法人単位だということの確認です。
 それから、今、新谷委員がおっしゃったケース、それはそうだろうと思いますが、今度労働契約法になるわけなので、ある意味ケース・バイ・ケースというか、個別判断にもなると思います。ずっと労働側が主張されているように、最終的には裁判所で判断することになると思いますけれども、そういう理解でよろしいかどうかの確認だけさせていただければと思います。
○岩村分科会長 田中課長、お願いします。
○田中労働条件政策課長 繰り返しになりますけれども、無期転換ルールは、本来は労働者を使用する法人単位で契約期間を通算する仕組みでありますが、先ほど申し上げましたような法の潜脱につきましては、その部分を通算することだと考えております。ただ、労働契約法は民事法規でございます。あくまで個別判断で最終的には裁判所が判断するということは、御指摘のとおりだと考えます。
○岩村分科会長 輪島委員、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
○輪島委員 はい。
○岩村分科会長 ほかにいかがでございましょうか。池田委員、どうぞ。
○池田委員 今回の改正は、雇用機会の確保、特に若年層、女性の人たちの雇用機会の確保、有期から無期に変えるという大きな目的があったと思うんですが、実質的にこれに該当する人数はどれぐらいの人数なのか。半数の方たちは現状に満足しているというアンケートがかつてあったわけですけれども、実際にこれが施行された場合、どれぐらいの人数が基本的に有期から無期に転換されて、期待に応えられるような労働事情に変わっていくのかというような、具体的にどれぐらいの人数を期待されているのかという点が1点です。
 それから、先ほど何かあったときに裁判所というお話もありましたけれども、どんな問題でも中小零細に対する配慮なり、そういうものがあるわけです。私が考える限りにおいては、十把一からげでありまして、やはり中小零細、特にこれから育てていかなければいけないものづくりのところに関しましては、弁護士さんに相談する費用もないところが多いわけですから、十分そういうものを理解できるような方法論なりをとっていただきたいと思います。それぞれの会社がそれぞれのルールをつくっていかなければならないわけですから、大手さんもこれから大変だと思います。ただ、一方で、中小零細のものづくり、家族経営体の中でやっているところの人たち、アルバイトなり、長い間やっている人たちが、こういうものに適用されることは、非常に困るところも出てくると思いますので、本人の意思を十分に尊重されることと、将来、会社規模なりに合った配慮を何かの形でしていただけることを要望したいと思います。
 以上です。
○岩村分科会長 ありがとうございます。
 田中課長、お願いします。
○田中労働条件政策課長 対象となる人数という御指摘でございます。今回の無期転換ルールは本人の意思による申し出を要件としておりますので、権利を取得しても、申し出を行う方がどれぐらい出てくるかというのは、かなり予想しにくい部分があります。従来から、有期契約労働者の全体人数が約1,200万人と御説明申し上げておりますけれども、約3割が勤続5年超でございます。単純にかけますと、360万人ぐらいが無期転換の権利を今後有することになる可能性がございまして、その中で無期転換の権利が行使されていくことになっていくと考えております。
 あと、中小零細への配慮という御指摘でございました。今回のルールは、先ほども申し上げましたように、大きな法人さんだけではなくて、個人で有期契約労働者を雇われている方についても、勿論適用されるわけでございますので、可能な限りわかりやすく制度を周知し、周知の工夫も重ねて、トラブルのないようにしていきたいと考えております。これにつきましては、労使の皆様方にも御意見をお聞きしながら、効果的な周知徹底の方法についても御相談して考えていきたいと考えております。
○岩村分科会長 ありがとうございます。
 誤解のないように確認しておきたいのですが、今のお話の中で、以前行った調査の中で既に勤続5年以上の方々が何人かいらっしゃるかというお尋ねがありました。ただ、その方々は、今回の法律が成立して直ちに無期転換の権利を取得するわけではないのですね。田中課長にお願いします。
○田中労働条件政策課長 今回の改正の要綱におきましては、4ページの第五に「二 経過措置」を置かせていただいております。この経過措置では、この法律の施行の日以後に契約を締結するもの、締結された労働契約から5年のカウントを始めるということでございます。したがって、法律の施行後5年間は無期転換は生じないことになります。したがって、施行5年後に現在のような勤続年数の構成が変わらなければ、先ほど申し上げましたような人数の方々が無期転換の権利を得る可能性があるという趣旨でございます。
○岩村分科会長 ありがとうございます。
 池田委員、よろしゅうございましょうか。
○池田委員 はい。
○岩村分科会長 そのほかにいかがでございましょうか。新谷委員、どうぞ。
○新谷委員 同じく第一の二の部分であります。第一の二の中に2箇所「厚生労働省令で定める」ということで、省令委任事項が入っております。先ほどの事務局の答弁の中にも、これは労働契約法であるから、純粋な民事法規であるという答弁がありましたけれども、過去に、労働契約法の制定の際にも労使で随分論議をして、省令委任事項については、労使ともに反対したという経過があったわけでありまして、労働契約法の中に省令委任事項が入ることによって、純然たる民事法規である労働契約法の性質を変えてしまうのではないかということを、私どもとしては、大変危惧しているところであります。
 労働契約法は労働契約関係の国民の権利義務関係を規律する、まさしく基本法としての性格の法律でありますので、省令委任事項を設けるということではなくて、すべて法律条文として書き込み、これを国会において法律として制定すべきだと思います。行政指導法とは異なって、私法上の効果の判断権者は裁判所でありますので、そのような観点からすれば、省令委任事項を設けて、行政による判断基準を労働契約法の中に持ち込むことは、本来、避けるべきであると考えております。
 今回の法改正の中に、省令委任事項が入るということが提案されているわけでありますが、今後労働契約法がますます内容を豊富化していく際に、今回の省令委任事項が先例とされて、安易に労働契約法の中に省令委任が増えていくことについては、避けるべきであると考えています。これについて、事務局の見解を再度確認させていただきたいと思っております。
○岩村分科会長 田中課長、お願いします。
○田中労働条件政策課長 労働契約の民事的効力を規律する基本法であります労働契約法につきましては、できる限り、法律で要件と効果を書き切ることが重要と私たちも考えております。今回、省令委任をしている事項は、内容が非常に複雑で、かつ技術的な内容であることから、要件の基本的な部分であります6か月以上または1年未満の契約については、その2分の1以上の空白期間があれば、その前の契約期間は算入しないことを法律に明確に定めた上で、省令に委任することはやむを得ないものと考えております。今後改めて労働契約法の改正の議論が行われる場合には、これを前例とせず、先ほど申し上げました基本的な考え方に則して対応してまいりたいと考えております。
 また、どのような省令を定めるかにつきましては、法律の成立後、改めて当分科会で御議論をお願いしたいと考えております。
○岩村分科会長 新谷委員、いかがでしょうか。よろしゅうございましょうか。
○新谷委員 はい。
○岩村分科会長 そのほかにいかがでございましょうか。お願いします。
○春木委員 春木です。
 今ほどの議論の中でもあるように、わかりにくい部分もあれば、何となくあいまいに表現をしておるところも、条文の中にはあろうと思っています。
 条文は別としても「第二 有期労働契約の更新等」というタイトルのつけ方です。第一については「有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換」、第三は「期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止」といった状況で、この条項の中で何を定めているのかということを、明確に表わしているタイトルになっているにもかかわらず、第二については、雇止め法理の制定法化の条文と受け止めておりますが、「有期労働契約の更新等」というタイトルになっており、雇止め法理の制定法化をイメージできるのかといえば、なかなかイメージしにくい部分があると思っています。なぜこのようなタイトルとされたのか、その意味合いについてお伺いをしたいと思います。
○岩村分科会長 田中課長、お願いします。
○田中労働条件政策課長 ただいまの質問は、要綱の2ページの真ん中辺り、第二の表題についてでございます。要綱の第二は建議の記の3を実現するため、判例法理である雇止め法理を法定化するものでございます。労働契約法のほかの条の見出し、例えば第16条の解雇の規定との平仄を考えますと、ここのタイトルを簡潔に雇止めと表現するような案も考えられるところでございますが、雇止めは、法律的には、単に労働契約が期間満了により更新なくして終了するという事実にすぎないものでありますので、法律の条文や見出しに雇止めという表現を使うことは困難でございます。このため、判例上も認められている効果に着目をいたしまして、一定の要件を満たす場合には、有期労働契約が更新されるという法律の効果に着目しまして、言わば法律に基づく更新であることから、法律案要綱におきましては、有期労働契約の更新という項目といたしております。
 この規定が雇止め法理の法定化であることは、法律成立後、解釈通達やパンフレットなどに明記しまして、労使関係者に向けて、わかりやすく周知をしていくように努めたいと考えております。
○岩村分科会長 春木委員、いかがでしょうか。よろしゅうございましょうか。
○春木委員 はい。
○岩村分科会長 ありがとうございます。
 そのほかはいかがでございましょうか。新谷委員、どうぞ。
○新谷委員 第二の二です。第二の二は2つの雇止め法理のうちの日立メディコ事件の類型を制定法化したものと受け止めておりますけれども、この条文の中で、「契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるもの」という規定ぶりになっています。しかし、これは建議をつくる際にも大分論議をさせていただきましたが、制定法化する際にベースとしたパナソニックプラズマディスプレイ事件の最高裁判決の書きぶりは、期間満了時ではなくて、「期間満了後も雇用契約が継続されるものと期待することに合理性が認められる」ということになっておりまして、日立メディコ事件最高裁判決、パナソニックプラズマディスプレイ事件最高裁判決、いずれも合理的な期待を判断する時期について、満了時に限定しているわけではありません。
 もともとあったパナソニックプラズマディスプレイ事件最高裁判決の「満了後も」というところを、「満了時に」という表現に変えているわけであります。勿論、「満了後も」という言葉と「満了時に」ということでは、評価するポイント、軸が当然違いますので、内容が異なるわけでありますが、これまで限定されていなかった合理的期待の判断時期が新たに書き込みをされるということで、本来であれば、契約期間を通して、トータルで判断されるべき合理的期待の範囲が、満了時ということに縮減されてしまって、結果的に今ある判例法理から後退するのではないかという懸念があります。これについて、事務局及び判例法理ということですので、公益の先生の御見解も是非お聞かせいただきたいと思っております。
 以上であります。
○岩村分科会長 田中課長、お願いいたします。
○田中労働条件政策課長 御指摘の点は、松下プラズマディスプレイ最高裁判決の文言を踏まえて、建議の3を書かせていただいておりますが、建議の3の2行目に「その期間満了後も雇用関係が継続される」という部分がございます。この部分を要綱の3ページの第二の二に法文化する場合につきましては、要綱の二の下から9文字目からあります「更新される」という形で規定をしております。「その期間満了後も雇用関係が継続される」という部分につきましては、要綱では「更新される」という部分に対応するものとして読んでいただければと思います。
 一方で、要綱のところですけれども、その上に「満了時に」という言葉がございます。「満了時に」というのは、合理的期待があったかどうかを判断するのがいつの時点かを明らかにする文言として盛り込んでおります。合理的期待の判断時点は、その有無を判断するために考慮すべき要素の範囲を画するものでありまして、最初の契約締結から判断時点までのあらゆる事情が考慮されますことから、判断時点、つまりいつまでの事情を考慮するかを明確にする必要性が高いものでございます。現在の雇止めに関する裁判例でも、契約満了後の訴えの提起を前提といたしまして、最初の雇入れから雇止めされた契約の満了時に至るまでのあらゆる事情を総合的に勘案した上で、契約の満了時点で合理的期待の判断を行っております。このため「満了時に」と判断の時点を条文上明確にすることで、判断の対象となる期間が限定されるなど、判例法理が妥当する範囲が変更されるものではございません。したがいまして、建議の記の3の内容を変更するものではないということを申し述べたいと思います。
○岩村分科会長 新谷委員の御希望では、公益委員のどなたかということでしたが。では、荒木委員、お願いいたします。
○荒木委員 私の見解は、今の事務局の説明と同様です。確かにプラズマディスプレイの判決では、どの時点において雇用継続の合理的期待を判断するのかについて、はっきり言っていません。しかし、従来の裁判例を分析すると、これはことの性質上、契約期間満了によって契約が終了した、その時点において、その雇止めの効力を認めてよいかどうかということですので、期間満了時における合理的な期待を見てきたと考えています。お尋ねの点は、一旦労働者が合理的な期待を抱いていたにもかかわらず、使用者の方で一方的に更新期間の上限を3年とするなどということによって、労働者の抱いてきた期待が失われたものとして取り扱われるとすればおかしいというご疑問かと思います。その点については、一旦労働者が雇用継続への合理的な期待を抱いていたにもかかわらず、使用者の方で更新期間の上限あるいは更新回数の上限などを一方的に宣言したことによって、労働者の合理的期待が失われるということにはならないというのが裁判例の一般的な傾向だと理解しています。しかし同時に、雇用継続の期待は、期待というものの性質上、増えることもあれば減ることもある。そこで、事務局から説明があったように、裁判所では、雇用契約終了の時点において、雇入れから雇止めされた契約の満了時に至るまでのあらゆる事情を総合的に勘案した上で、満了時点で合理的期待があるかどうかを判断していると考えますので、先ほどのご説明が、現在の判例状況を反映したものと言ってよいと思います。
○岩村分科会長 ありがとうございました。
 新谷委員、いかがでございましょうか。どうぞ。
○新谷委員 事務局及び荒木先生から御回答いただいたわけでありますが、契約締結時から高まってきた雇用継続への合理的な期待というものが、使用者の一方的な言動によって、満了時点で小さくなったとされてしまう懸念があります。トータルで判断するというのが今の裁判例の流れだという御説明はわかりますが、制定法化されたときに、裁判規範としてこれが働くということは勿論、行動規範として働く場合、つまり、現場の労使がその条文を見てどのように行動するのか、ということもあるわけです。ですから、満了時点で合理的な期待をなくしてしまえばいいという誤ったとらえ方をされないように、合理的期待の判断時期は、連続した有期労働契約における事情も含めて、満了時に至るまでのあらゆる事情を判断するという、事務局からの答弁が先ほどありましたが、この点について、十分な周知をしていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。
○岩村分科会長 田中課長、お願いします。
○田中労働条件政策課長 先ほど申し上げましたが、判例法理が妥当する範囲がこれで変更されるものではございません。そのことについては、今後、国会の法案審議の場においても、そうした答弁を行うことによりまして、立法者意思を明確にするとともに、法律成立後は解釈通達やパンフレットなどで誤解を招くことがないよう、その趣旨を明確に周知してまいりたいと考えております。
○岩村分科会長 新谷委員、よろしいでしょうか。
○新谷委員 はい。
○岩村分科会長 ありがとうございます。
 ほかにいかがでございましょうか。中島委員、どうぞ。
○中島委員 ありがとうございます。
 前回も懸念として申し上げた点なんですけれども、第三の文末の部分で「不合理と認められるものであってはならない」という文言がありますが、ここはあるべき論的、すなわち宣言的な規定であって、民事的効果がある条文とは読まれないのではないかという専門家の声も聞こえてきております。
 そこで、確認をさせていただきたいのですけれども、この条文に違反する労働条件は無効となるのかどうか。そして、その効果は損害賠償だけなのかという点、また比較対象となった労働条件との差というのは、補充される効果もあると考えてよいのか。そこについて再度お伺いしたいと思います。
○岩村分科会長 田中課長、お願いします。
○田中労働条件政策課長 御指摘の点は、前回もお答えをしたところでございますけれども、第三の規定につきましては、民事効のある規定であると考えております。具体的にはこの規定によって、不合理とされた労働条件の定めは無効となると解され、故意過失による権利侵害、すなわち不法行為として損害賠償が認められ得る規定となるものでございます。本条が設けられた趣旨から見ても、無効あるいは損害賠償の効果を持つ規定と考えております。
 この規定によりまして、ある労働条件が無効となった場合の労働条件の帰趨、補充的効果などにつきましては、労働条件の定め方などにより異なってくるとは考えられますけれども、基本的には無期契約労働者と同じ労働条件が認められるものと考えております。
○岩村分科会長 中島委員、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
○中島委員 はい。
○岩村分科会長 そのほかにいかがでしょうか。新谷委員、どうぞ。
○新谷委員 重要なところですので、再度確認をさせていただきたいと思っております。
 民事効があるという御答弁でありましたが、「不合理と認められるものであってはならない」という条文は、以前、特許法の規定を参考にされたと御答弁をいただいたと思います。ただし、特許法の35条をよく見てみますと、条文の構造が複合的になっております。直接参考にされたのが特許法の35条の第4項だと思いますが、実は、第4項の前の第3項に職務発明の対価の支払いについての規定がありまして、職務発明について、「相当の対価の支払いを受ける権利を有する」という原則的な規定が設けられています。そして、第4項で、引用しました対価の支払いについて、「不合理と認められるものであってはならない」と規定し、まさしく参考にした条文が書かれている。更に補充効に関連していくと、第5項において、不合理と認められるものに該当するものについては、第3項の対価の額について、いわゆる相当の対価を定めなければならないということで、補充的効果を改めて規定している。非常に複合的にトータルで民事効をカバーしている条文になっていると思います。
 そういった意味では、特許法の35条全体で見れば、民事的効果もあって、補充効もあると判断されているんだと思いますが、今回、第三の文末に書かれた部分というのは、そのうち、第4項の「不合理と認められるものであってはならない」という部分だけを引用してきていると思います。こういった条文構造で、先ほど事務局が御答弁されたような民事的効果が本当にあるのかということについて、非常に重要な点ですので、公益の先生方からも改めてこれに対する御見解をお伺いしたいと思っております。
○岩村分科会長 まず事務局からお答えをいただいて、その後、公益の委員のどなたかにお答えいただくことにしたいと思います。
 田中課長、お願いいたします。
○田中労働条件政策課長 先ほどお答え申し上げしたように、厚生労働省しては、民事効がある規定であると考えておりまして、国会の法案審議の場においても、そのような答弁を行うことにより、立法者意思を明確にするとともに、法律成立後は誤解を招くことのないよう、解釈通達やパンフレットなどで、その趣旨を明確に周知すること等を通じて、裁判でもそうした解釈を十分に踏まえて、判断がなされるようなるものと考えているところでございます。
○岩村分科会長 公益委員、どなたかお願いできますか。山川委員、お願いいたします。
○山川委員 今おっしゃられたことの補足になりますけれども、私法上の効力規定かどうか、明文の規定がなかったとしても民事効を持つ規定かどうかは民法等でも議論がなされており、伝統的な考え方によれば、私人の利益を保護する趣旨の規定かどうか等を考慮して、効力規定かどうかが決せられると理解しています。今回の要綱案は有期契約労働者の労働条件保護の趣旨であることは問題ないと思いますので、そういう趣旨からすると民事効があると考えられ、またそういった立法者意思を明らかにしていくことによって裁判所もそれを尊重するだろうと予想されます。特許法35条の5項は、相当の対価という対価の部分にターゲットを置き、それを裁判所が定めるという、補充効というより契約内容を裁判所が直接形成することを定めた規定で、いわゆる補充効とは違うようですので、今回は要綱案のようなものでよろしいのではないかと思います。
○岩村分科会長 新谷委員、いかがでございましょうか。よろしいでしょうか。
○新谷委員 わかりました。
○岩村分科会長 ありがとうございます。
 そのほかにいかがでしょうか。輪島委員、どうぞ。
○輪島委員 ありがとうございます。
 「第五 附則」の「一 施行期日」でありますけれども、改正法の施行時期については、ここにありますように「政令で定める日」となっていて、政令委任という形になっているわけですが、企業実務の方は、これからいろんなことを整理しなくてはならないということからすると、1年以内の施行というのは結構慌ただしいと思っております。改正法が成立した後、可能な限り、早く施行時期を明確にしていただくことが必要なのではないかと思いますので、政府におかれましても、その点について、最大限、御努力をいただきたいと思っております。
○岩村分科会長 田中課長、お願いします。
○田中労働条件政策課長 1年以内の政令で定める日とする趣旨は、十分な準備期間をとって、円滑に施行するという趣旨でございます。そういった観点から、施行時期について、法律が成立しましたら、政令を可能な限り速やかに制定して、具体的な施行時期を明らかにしていくことが重要だと思っております。厚生労働省として、最大限、努力したいと考えております。
○岩村分科会長 輪島委員、いかがでしょうか。よろしゅうございましょうか。
○輪島委員 はい。
○岩村分科会長 そのほかにいかがでございましょうか。宮本委員、どうぞ。
○宮本委員 ありがとうございます。
 今回の無期労働契約に転換する仕組みというのは、我が国では初めての規制になるわけであります。したがって、1つ懸念されるのは、雇止めが発生しないかどうかということであります。
 例えば我が国のお隣、韓国では、2年間の期間制限などを内容とする期間制労働者保護法が既に施行されておりますけれども、この法律の施行を聞いてみますと、以前に比べて、かえって非正規労働者が増加しているとも聞こえてきます。加えて、雇止めによって労働者の入れ替えなども起きていると聞いています。そこで、韓国では、この対策の1つとして、今年4月に行われる予定の総選挙で、野党がマニフェストの中で、この法改正に関する内容なども盛り込んでいると聞いています。韓国の事例を見る限り、我が国でも同様な事案が増加するのではないかという課題認識を持つべきではないかと思っています。
 昨年12月26日に出した建議の中にも、制度の運用に当たり、利用可能期間到達前の雇止めの抑制策の在り方については、労使を含め十分に検討することが望まれるという一文がありますので、建議にも盛り込まれた雇止めの抑制策について、法の施行日までに検討を行うべきだと思っています。
○岩村分科会長 田中課長、お願いします。
○田中労働条件政策課長 御指摘の点、建議の記の2の3番目の段落ですけれども「制度の運用にあたり、利用可能期間到達前の雇止めの抑制策の在り方については労使を含め十分に検討することが望まれる」とされているところでございます。
 厚生労働省といたしましては、建議の趣旨を踏まえまして、法案が成立した暁には、利用可能期間到達前の雇止めを抑制するための効果的な方策について、労使の協力もいただきながら、速やかに検討をしてまいりたいと考えております。
○岩村分科会長 宮本委員、いかがでございましょうか。よろしゅうございましょうか。
○宮本委員 はい。
○岩村分科会長 ありがとうございます。
 輪島委員、どうぞ。
○輪島委員 ありがとうございます。
 直接関係ないことで恐縮ですけれども、統計のことをお伺いしたいと思います。今度の無期転換ルール、有期労働者が利用可能期間の上限を超えて5年になったときに、無期に転換をするルールを制度的に導入することになったわけですが、統計上、無期になった人たちは、いわゆる正社員、正規労働者というのか、非正規労働者というのか、また統計上どういうものになるのかということです。8年後の見直しでございます。
 最近、企業側、業種団体に説明をさせていただくと、宮本委員の御懸念もわからないわけではないんですけれども、少なからず無期に転換する仕組みを検討しなくてはならないと、真剣に考えていらっしゃる企業、人事担当者が多いのではないかと思います。その結果、無期の労働者が増えて、島田委員も審議会の途中でずっと御主張されて、そこのところの労働条件はまた別途労使でということはよく理解をしているつもりですけれども、統計的に無期転換にして非正規が増えるということで、8年後にまた労働側の委員から大変厳しい御指摘をいただくのも何かと思っております。
 無期転換ルールは非常に大事な話だと思いますし、今後、正規、非正規というような二元論の話、または統計上どういうふうにするのかということも含めて、そういう整理も別途大事なのではないかと思っておりますので、これは労働経済学者の先生も含めて是非前向きに、今度の法律改正を踏まえた、今後の議論をお願いしたと思っております。
○岩村分科会長 ありがとうございます。
 荒木委員、お願いいたします。
○荒木委員 今の御指摘は大変重要な点だと思いますけれども、現在、並行して、厚生労働省で非正規ビジョン懇というものをやっています。まさに正規労働者とは何か、非正規労働者とは何かという議論をしているわけです。これまで正規、非正規という2分論でやってきたことに問題がある。この分科会では、有期という不安定雇用を安定雇用につなげる道筋をつくることが重要という議論をしてきたわけで、そういう観点からすると、有期なのか、無期なのかが非常に大事な点です。
 これまで正規労働者は、無期契約で、フルタイムで、直接雇用されている人をいうと考えてきたと思います。そういう観点からすると、直接雇用でフルタイムの有期契約労働者が有期契約から無期契約に移れば、正規労働者の範疇に入ってくることになります。正規雇用ということによって、人事管理上当然こうあるべきだというイメージがありますが、無期と有期の大きな壁を移動可能にして、雇用条件の改善につなげていく、そういう方向が大事だと思います。これからは正規か非正規かということではなくて、有期か無期かという、非正規雇用の何を問題としているのかを明確にして議論をするのが、政策を考える上でも重要ではないか。そういう議論を、まさに非正規ビジョン懇でやっているところではないかと思います。
○岩村分科会長 ありがとうございます。
 田中課長、お願いします。
○田中労働条件政策課長 この法律案につきましては、見直し規定も設けておるところでございますが、施行状況の把握に、輪島委員がおっしゃるとおり、統計というものが重要な部分がございます。そういう視点から統計の問題についても十分留意しながら、厚生労働省としても対応していきたいと考えております。
○岩村分科会長 よろしいでしょうか。
○輪島委員 はい。
○岩村分科会長 ありがとうございます。
 新谷委員、どうぞ。
○新谷委員 今、輪島委員から統計の話を出していただきました。労働力調査を使って非正規の方々の数が1,700万人強という数字があって、その一方で、有期労働契約の方が一体何人いるのかというのが、実はわからないというところから論議がスタートしたと思います。それは統計の中に契約期間の有無別の人員をとる仕組みがないから、有期労働契約の数がわからないことになっています。今後、検討するに際しては、いずれにしても8年後にはこれは見直しのタイミングがめぐってまいりますので、無期転換された方が一体どれぐらいいるのかということも含めて、統計の整備を是非進めていただきたいと思います。
 以上です。
○岩村分科会長 ありがとうございました。
 それは事務局でも御検討いただきたいと思います。
 ほかにいかがでございましょうか。よろしゅうございましょうか。新谷委員、どうぞ。
○新谷委員 中身について、総括的な見解を申し上げてよろしいですか。
○岩村分科会長 どうぞ。
○新谷委員 29日に諮問いただきました法律案要綱について、29日、本日と論議をさせていただきました。
 最後に労働側を代表いたしまして、何点か意見と感想を申し上げたいと思っております。
 今回の労働契約法の改正は、先ほど申し上げましたように、我が国の雇用労働者の3分の1を超える1,700万人とも言われる非正規労働者の大半を占める有期契約労働者に関わるルールの立法でありまして、その影響の大きさでありますとか、労働契約法というのは行政指導法ではありませんので、最終的には裁判所において判断され、それによって紛争解決をするという法律でありますので、非常に重要な法律改正であるという認識の中で、十分時間をかけて慎重に対応したいと私どもは考えておりました。
 法律案要綱は、年末にとりまとめた建議、横書きと言われていますけれども、横書きの建議の内容を忠実に縦書きに書いていくことが大前提であると思っております。しかし、今回、法律案要綱が諮問されたのは2月29日です。過去の例を調べますと、労働契約法の制定時の建議から諮問までのタイミング、あるいは労働基準法の18条の2、その後、労契法の16条になった条文などを新設した労働基準法の改正時といった過去の例に比べて、諮問の時期が1か月遅いということが、今回のタイミングではないかと思っております。勿論、通常国会の始まる時期は決まっておりますので、通常国会の法案提出時期が決まっている中で、ぎりぎりの審議日程となり、検討する時間が余りにも短かくなってしまったということになり、これについては、大変残念だと思っております。今後こういうことが先例にならないように、時間的に余裕をもった期日設定をしていただき、十分に検討できる時間をとっていただくように、強く要望したいと思います。これが1点であります。
 次に、今回、追加をされます3か条についてであります。3か条はこれまでの論議の中でもありましたように、既存の19か条の労働契約法の条文と比べまして、非常に複雑で、わかりにくい条文の構成になっております。国民がこの法律を利用するといったときに、わかりにくいというのが実感であります。この法律が今後国会の中で論議されて、成立、施行される際には、現場の労使が使いやすいものとなるように、誤った理解や解釈の下に、それが誤った行為規範として機能しないように、是非周知徹底を図っていただきたいと思っております。
 また、今回2回にわたる分科会の中でも、この法律案要綱について、我々として質問させていただきまして、懸念点について、事務局並びに公益の先生からも御見解、御答弁をいただいたわけでありますけれども、懸念点が完全に払拭できたとは考えておりません。今後、国会審議の場において、立法者意思を明確にすることが大事だと思っておりまして、これは立法府の責任でありますが、行政府、政府としても、しっかり対応していただきたいということをお願い申し上げます。
 以上、労働側の見解を申し上げまして、この法律案要綱について、了承したいということを申し上げたいと思っております。
 以上であります。
○岩村分科会長 ありがとうございました。
 使側の方はいかがですか。輪島委員、どうぞ。
○輪島委員 ありがとうございます。
 今の新谷委員の御発言について1つだけ確認ですけれども、3つぐらいおっしゃったわけですが、3つとも理由としては非常にネガティブな理由のように聞こえたのですけれども、了解ということでよろしいということですか。
○新谷委員 はい。
○輪島委員 ありがとうございます。
 それでは、私どもとして、簡単に見解を述べさせていただきたいと思います。
 これまで私どもとしましては、この審議会で大変長い時間をかけて議論してきた結果ということではありますけれども、基本的には従来からずっと申し上げているように、何らかの規制ないしルールが導入されることについては、反対の立場を貫いてきたということであります。
 そのような意味では、使用者側のスポークスマンとしては、非常に重く受け止めているわけであります。
さはさりながら、長い期間をかけて労働政策審議会で議論をしてきた結果、年末の12月26日に労使の意見がとりまとめられたと考えているところでございます。
 労働側は御懸念の点が多々あると伺っておりましたけれども、私どももないことはないわけでありますが、基本的に2月29日に諮問をされておりますものは、建議にとりまとめられた内容と同一のものだと考えているところでございまして、その観点で、労働政策審議会で、労使で真摯に議論をした結果と考えているところでございまして、了としたいと思っているところでございます。
 以上です。
○岩村分科会長 ありがとうございました。
 ただいま労側、使側から、いずれもこの要綱案について了としたいという御意見をいただきました。この要綱案については概ね意見の一致が見られたと思います。そこで、労働政策審議会に報告をし、厚生労働大臣に答申をしたいと考えますが、よろしいでしょうか。
(「異議なし」と声あり)
○岩村分科会長 ありがとうございます。それでは、そのように進めたいと思います。
 事務局で答申案をお配りいただき、それを読み上げてください。お願いいたします。
(答申案配付)
○岩村分科会長 青山調査官、お願いします。
○青山調査官 それでは、読み上げます。
 2枚つづりになっておりますが、2枚目の労働条件分科会長から労働政策審議会会長への報告の方を読ませていただきます。

「労働契約法の一部を改正する法律案要綱」について
 平成24年2月29日付け厚生労働省発基0229第1号をもって労働政策審議会に諮問のあった標記については、本分科会は、以下のとおり報告する。

 要綱については、おおむね妥当と考える。

 以上です。
○岩村分科会長 今の答申案について、御確認をいただいたものとしてよろしゅうございましょうか。
(「異議なし」と声あり)
○岩村分科会長 ありがとうございます。
 そうしますと、労働政策審議会令第6条第9項及び労働政策審議会運営規定第9条の規定によりまして、分科会の議決をもって、労働政策審議会の議決とすることができると定められております。
 そこで、今、配付いただきました内容で会長に報告をし、この報告のとおり、厚生労働大臣あてに答申を行うことにしたいと考えております。よろしゅうございましょうか。
(「異議なし」と声あり)
○岩村分科会長 ありがとうございます。それでは、そのように取り計らいたいと思います。
 ここで労働基準局長からごあいさつをいただきます。よろしくお願いいたします。
○金子局長 ただいま労働契約法の一部を改正する法律案要綱につきまして、答申をいただきました。
 有期労働契約の在り方についての検討は、一昨年の10月以来、分科会長始め委員の皆様方に大変熱心な御議論をいただき、昨年末の建議、本日の答申になったわけでございます。深く感謝を申し上げたいと思います。
 本日いただきました答申に基づきまして、労働契約法改正案を今国会に速やかに提出すべく、急いで準備を進めてまいります。
 大変ありがとうございました。
○岩村分科会長 ありがとうございました。
 私からも一言だけ申し上げさせていただきます。
 先ほど新谷委員からもありましたけれども、審議日程につきましては、私の不手際もありまして、時間が厳しくなったことについては、お詫びを申し上げたいと思います。
 また、法律の文言というのは、確かにわかりやすくあるべきだというのは、委員の皆様が御指摘のとおりでございますが、やはり実際にやってみますと、有期契約の問題というのは、非常に権利義務関係が複雑なものですから、それを正確に反映させようとすると、どうしても一定程度難しいものになってしまわざるを得なかったということは、是非御理解をいただければと思っております。
 この間、労使の委員の先生方、公益の先生方には、いろいろ御議論をいただき、何とかとりまとめに至ることができました。分科会長として、厚く御礼を申し上げたいと思います。
 また、事務局におかれましても、この間、建議の準備あるいは要綱案の準備等について、大変御尽力をいただきまして、ありがとうございました。
 この先は、今、局長もおっしゃいましたように、早期の国会審議、法案成立に向けて、厚労省としても、是非御尽力をいただきたいと思います。よろしくお願い申し上げます。
 最後に事務局から何かございますでしょうか。
○青山調査官 次回の労働条件分科会につきましては、調整の上、委員の皆様にお知らせしたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
 以上です。
○岩村分科会長 それでは、本日の分科会はこれで終了とさせていただきます。
 議事録の署名でございますが、労働者代表は春木委員、使用者代表は宮地委員にそれぞれお願いをいたします。
 本日は大変お忙しい中ありがとうございました。これで終了いたします。

(了)
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