働く女性の全国センター(ACW2)中期ビジョン
2013年第7回総会決議
(1)ディーセント・ワークは企業内の労働のみならず、すべての労働に適用されるようにし、労働概念の見直しを主張します。
「ディーセントワーク」(以下DW)は現在日本の行政でも取り上げられるようになりました。しかし、それは「日本再生戦略」(※)の枠組みにおいてです。
私たちはILO(国際労働機構)が打ち出した人権とジェンダー平等に基づいたDWの実現に向けて取り組みます。DWは企業内の労働のみならず自営業・家事労働等「すべての労働」にあてはまるものだからです。
そもそも、私たちの社会の「労働」は、「大企業ホワイトカラー男性正社員」の働き方が、いまだに基準となっています。この基準を変え、女性の労働、とりわけ女性の半数以上の働き方である非正規労働と呼ばれる働き方において、まっとうな生活が出来る社会の実現を目指します。
※日本再生戦略
閣議で発表された<新成長戦略「元気な日本」復活のシナリオ(2010年6月発表)>http://www.kantei.go.jp/jp/sinseichousenryaku/sinseichou01.pdf
によると、
「雇用の安定・質の向上と生活不安の払拭が、内需主導型経済成 長の基盤であり、雇用の質の向上が、企業の競争力強化・成長へとつな がり、その果実の適正な分配が国内消費の拡大、次の経済成長」のために「ディーセント・ワーク(人間らしい働きがいのある仕 事)」の実現に向けると書かれている。
(2)男女雇用機会均等における<平等>の見直しを行います。
●男女雇用機会均等法が施行されて四半世紀ですが、女性の非正規労働者は半数を超え、いわゆるまともな労働状況に置かれているとはとてもいえません。
「雇用機会均等」の発想は、スタートを同じにすることが<平等>であり、スタートさえ同じにすれば、あとは競争をよしとする思想でした。しかし私たちがこの四半世紀で学んだ事は、競争主義に巻込まれたときに、格差が広がるということではないでしょうか?人を蹴落とさない働き方、生き方が出来るための<平等>を実現させるため、男女雇用機会均等における<平等>の見直しを行います。
(3)過労死や働き過ぎによる健康被害の甚大さを明らかにし、社会環境作りおよび社会への責任を問うために、ILO条約第1号を批准しうる社会の実現を目指します。
日本はいまだに、「労働時間(工業)条約」と呼ばれるILO第1号および「労働時間(商業・事務所)条約」第30号のどちらの条約も批准していません。これら2つの条約はどちらも「1日8時間、1週48時間を超えてはならない」と定めた有名な条約です。
本来生活するために働くはずが、むしろ働く事によって健康を害し、「過労死」と呼ばれる「死」すら招く事態にあります。この本末転倒な状況を改善していくための社会環境作りに努力し、社会の責任を明らかにして行きます。
(4)性別役割分業をなくしてゆくために、企業横断的な同一価値労働同一賃金を目指します。
「性別役割分業」は賃労働と家事労働という二分法だけではありません。たとえば、企業内の労働も「性別役割分業」が浸透しています。
たとえばおおむね総合職(転勤などのある仕事)は男性、一般職(事務等を担い、転勤はない)は女性と分かれているのが実情です。
職種別の給与平均を見れば、あきらかに、男性が多く務める職種(金融、メーカー等)が高い給与をもらっている一方で、女性が多く務める職種(サービス業・福祉等)が低い給与であるという事態も生じています。
企業横断的同一価値労働同一賃金を確立し、賃労働・家事労働両方において、性別役割分業をなくす事こそが、女性の貧困をなくすための重要な課題の一つなのです。
(5)男性主軸の現状の労働運動に対し、女性達の参加しやすい労働運動を具体的に提案していきます。
労働問題についての活動は、労働組合および労働組合以外においても、いまだに男性主軸です。その結果、しばしば女性へのセクシュアル・ハラスメントやパワーハラスメントが頻発しています。その状況を打破するべく、女性ユニオンが誕生しましたが、いまなお、この状況は大きく変わってはいません。
労働組合全体の組織率が低下している現在こそ、男性中心の労働組合のありようを見直し、女性、セクシュアルマイノリティ、移住労働者、障がい者など、さまざまな立場の人たちが活動しやすい仕組み作りを目指します。
そして既存の労働組合も含めて労働問題への多様なアプローチを模索し、提案します。
また、教育ワークショップ等に力を入れ、外側の問題のみならず、自分たちの組織の中のハラスメント等の問題にも取り組むことができるよう、自覚を促していくやり方を学びます。
(6)右肩上がりの経済前提ではない、豊かな生活(ディーセントライフ)の実現を目指します。
私たちの社会の価値観は「勤勉」をよしとしていますが、その勤勉さとは基本的には、命を支える営みというよりは、自然環境や第一次産業を軽視し、つぶし、右肩上がりの経済を支える仕事をすることで、承認される性質のものでした。
さらには「そのような社会の中で成功したのは勤勉だからだ」と、既存の社会における優位な立場を、個人の努力のためのみであると考えさせるように「勤勉」という言葉を利用してきました。
私たちは右肩上がりの経済を前提とせず、勤勉さを企業の経済成長へと搾取されることのない生き方を目指します。ディーセントワークは企業内労働だけをさすものではなく、すべての労働を指すと前述しました。このように労働概念をまっとうなものに変革する事によって、生活スタイルもディーセントなものへと変革をしていくことを目指します。いつでも学び直したいときに学び直し、安心して失業できる社会、どんな立場であっても、一人一人が必要最低限の健康で文化的な生活が送れる権利が守られ、またその権利を守る事が「仕事」であるような社会を目指します。