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書評 デンマークの光と影 福祉社会とネオリベラリズム

デンマークの光と影
福祉社会とネオリベラリズム

鈴木優美 著(リベルタ出版) 

現在、デンマークモデルとして日本でも、「黄金の三角関係(トラインアングル)」について

しばしば、言及されています。
フレキシュリティという構造は、柔軟な労働市場、寛大な失業手当
積極的労働市場政策を、政府と経営団体、労働組合が合意形成して
作り上げてきたものだということです。
その高福祉社会にも新自由主義の波が急速に押し寄せて、
「福祉から就労へ」と政策転換が
図られて変化している現実が、とてもリアルに書かれています。

今後の、日本を考える上でも、とても参考になります。
私は、この本の中で、とても感銘を受けたのは、福祉の担い手が
2008年に「黄金の三角関係」を崩しかねないほどの強力な
ストライキを打ったという現実です。

老人ホームの介護福祉士が、窓ガラス工場のスキルのいらない職場に
転職する。なぜなら、介護福祉士の賃金より、工場労働の賃金の方が
高いから。男女賃金格差の縮小を求めて、介護、看護師らが5万人を
巻き込んでストライキ、入浴介助や、手術なども延期され、それでも
国民が女性たちの戦いを支持したというのです。

3・8国際女性デーには、新聞全面広告で「女性は、すべて18%の割引を受けるべきだ」と、男女賃金格差の18%を買い物の割引にすべきと、挑発的フレーズを使って出し、現在も議論が続いているとか

日本は、50%もの格差があっても、ストライキも打てないのとは
大違い、2004年まで、デンマーク女性労組があったのですが
今は、LOの中の3Fというブルーカラーの労働組合に合流
し多大な影響力を持っているのがわかります。

ぜひ、みなさんも、デンマークモデルを語る前に
その背景に、女性労働者の身を削るような闘いがあることを
知ってほしいと思います。

著者の鈴木優美さんのデンマーク紹介の貴重な著書に感謝します。
闘いの生きいきとした記録に、元気をもらえました。

この3Fの中心となる元のデンマーク女性労働組合の
戦略の第1が、教育、教育、教育と、言っていた意味が
今、ほんとに身にしみて良く分かる気がしました。
(1999年韓国で開催された女性労組会議に参加した時に聞きました)

伊藤みどり

カテゴリー 事務局日記

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