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2012年8月10日労働契約法改正施行(厚生労働省通達)4

労働契約法改正施行(厚生労働省通達)4
*平成24年(2012年)8月10日付け基発0810第2号「労働契約法の施行について」(厚生労働省労働基準局長発 都道府県労働局長あて)

有期労働契約の更新等(労働契約法第19条<改正法の公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日までの間は労働契約法第18条>関係)

趣 旨

 有期労働契約は契約期間の満了によって終了するものであるが、契約が反復更新された後に雇止めされることによる紛争がみられるところであり、有期労働契約の更新等に関するルールをあらかじめ明らかにすることにより、雇止めに際して発生する紛争を防止し、その解決を図る必要がある。

 このため、法第19条において、最高裁判所判決で確立している雇止めに関する判例法理 (いわゆる雇止め法理) を規定し、一定の場合に雇止めを認めず、有期労働契約が締結又は更新されたものとみなすこととしたものであること。

内 容

ア 法第19条は、有期労働契約が反復して更新されたことにより、雇止めをすることが解雇と社会通念上同視できると認められる場合(同条第1号)、 又は労働者が有期労働契約の契約期間の満了時にその有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由が認められる場合(同条第2号)に、使用者が雇止めをすることが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、雇止めは認められず、したがって、使用者は、従前の有期労働契約と同一の労働条件で労働者による有期労働契約の更新又は締結の申込みを承諾したものとみなされ、 有期労働契約が同一の労働条件 (契約期間を含む。)で成立することとしたものであること。

イ 法第1 9条は、次に掲げる最高裁判所判決で確立している雇止めに関する判例法理 (いわゆる雇止め法理) の内容や適用範囲を変更することなく規定したものであること。

 法第19条第1号は、有期労働契約が期間の満了毎に当然更新を重ねてあたかも期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態で存在していた場合には、解雇に関する法理を類推すべきである と判示した東芝柳町工場事件最高裁判決(最高裁昭和49年7月22日第一小法廷判決) の要件を規定したものであること。

 また、法第19条第2号は、有期労働契約の期間満了後も雇用関係が継続されるものと期待することに合理性が認められる場合には,解雇に関する法理が類推されるものと解せられると判示した日立メディコ事件最高裁判決(最高裁昭和61年12月4日第一小法廷判決)の要件を規定したものであること。

ウ 法第19条第1号又は第2号の要件に該当するか否かは、これまでの裁判例と同様、当該雇用の臨時性・常用性、更新の回数、雇用の通算期間、 契約期間管理の状況、 雇用継続の期待をもたせる使用者の言動の有無などを総合考慮して、個々の事案ごとに判断されるものであること。

 なお、法第19条第2号の「満了時に」は、雇止めに関する裁判例における判断と同様、「満了時」における合理的期待の有無は、最初の有期労働契約の締結時から雇止めされた有期労働契約の満了時までの間におけるあらゆる事情が総合的に勘案されることを明らかにするために規定したものであること。

 したがって、いったん、労働者が雇用継続への合理的な期待を抱いていたにもかかわらず、 当該有期労働契約の契約期間の満了前に使用者が更新年数や更新回数の上限などを一方的に宣言したとしても、そのことのみをもって直ちに同号の該当性が否定されることにはならないと解されるものであること。

エ 法第19条の「更新の申込み」及び「締結の申込み」は、要式行為ではなく、使用者による雇止めの意思表示に対して、労働者による何らかの反対の意思表示が使用者に伝わるものでもよいこと。

 また、雇止めの効力について紛争となった場合における法第19条の「更新の申込み」又は「締結の申込み」をしたことの主張・立証については、労働者が雇止めに異議があることが、例えば、訴訟の提起、紛争調整機関への申立て、団体交渉等によって使用者に直接又は間接に伝えられたことを概括的に主張立証すればよいと解されるものであること。

オ 法第19条の「遅滞なく」は、有期労働契約の契約期間の満了後であっても、正当な又は合理的な理由による申込みの遅滞は許容される意味であること

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