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日産・アデコ派遣切り裁判のご紹介

<日産・アデコ派遣切り裁判のご紹介>

●概要
日産自動車の本社で事務系の派遣社員として5年8ヶ月の間働き、雇い止めにあった当時20代の女性が、期間の定めのない従業員としての地位確認を求めている裁判です。
彼女の業務は形式上、派遣期間制限のない「専門26業務」のひとつ、「5号 事務用機器操作」とされていましたが、実際には庶務がほとんどでした。日産は、雇用責任を免れ、安く長く派遣社員を使い続ける為に派遣元のアデコと共謀して違法な「専門業務偽装」を行っていたのです。彼女は直接雇用を求めて労働局に申告を行い、労働局から日産・アデコへの是正指導も出ましたが、日産は指導を無視して彼女を雇い止めにし、その後も彼女の加入する首都圏青年ユニオンとの団体交渉に応じないため、2009年9月に東京地裁へ提訴しました。

●意義
この事件は、事務系派遣における「専門業務偽装」の典型的な事例です。
派遣法の制定以降、企業は人件費削減のために、いわゆる一般職と呼ばれる正社員の女性を派遣社員へとおきかえてきました。これは、不安定雇用の増加を防ぐために派遣社員の常用代替を禁じた派遣法の趣旨に反するものであり、派遣法上でも1~3年の派遣期間制限を超えて就業させる場合は、企業が直接雇用するよう定めています。しかし、実際には本件と同じく専門業務と偽装されて不安定雇用におかれ続け、いざとなれば簡単に切り捨てられる派遣社員が多くいます。女性の半数が非正規雇用といわれる今、同じような立場の人々、特に女性の派遣社員へ正規雇用の道を切り開く可能性を秘めた、重要な裁判です。

●成果と進捗
2010年8月18日付の毎日新聞により、日産が事務系派遣社員を直接雇用の契約社員に切り替えると報道されました。原因として「東京労働局から是正指導を受け方針転換を迫られたとみられる」とされています。これに続いて、同じ自動車メーカーであるトヨタ、マツダも事務系派遣社員を直接雇用すると発表しました。ただし、日産は契約社員にした後の契約期間の上限を2年11ヶ月としています。(※トヨタは正社員への登用、マツダは3年上限の契約社員への切り替え)
上限を設けたのは、判例などから雇い止めをしづらくなる3年を超えないためであり、いつでも解雇できる安い労働力として使い続けようという狙いが明らかです。このような逃げを許さないためにも、この裁判で期間の定めのない従業員としての地位を勝ち取らなければなりません。
また、同じく2010年8月18日付の毎日新聞では、日産が派遣法に違反する「派遣社員対応マニュアル」を作成・使用していたことも報じられました。これをうけて弁護団は日産に対し同マニュアルの提出を求め、同年12月に証拠提出されました。そこには日産が派遣法で禁じられている事前面接を行っていたことや、本来派遣元のアデコが行うべき賃金決定を日産が行っていたことなどが記載されており、裁判における原告側の主張の裏付けとなっています。

●今後の予定
これまでの裁判期日は9回を数えました。2011年4月現在、次回期日は未定です。これは、原告側からの文書提出命令申立の進行を優先させているためです。この申し立ては、東京労働局が日産・アデコへ是正指導した際の調査票や報告書といった文書一式を入手し、今後の裁判に役立てることを目的に行っています。
ただし、証人についてはすでにおおかたの予定が立っており、日産は指揮命令者1名と部門人事部長1名を、アデコはコンプライアンス推進部長1名を予定しています。(原告側からは、原告および日産で就業していた元派遣社員1名を予定)

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