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ホットライン特別報告(カンパありがとう)

みなさまからの浄財カンパに心より感謝申し上げます。総会にて発表した報告を掲載いたします。少し長いですが、お読みくだされば幸いです。

働く女性の全国ホットライン 特別報告 ホットライン寄付
~経過と2008年・2011年・2015年の比較

■2007年からの経過と現状、課題など

ACW2結成半年後、活動の土台として2007年7月に始まった「働く女性の全国ホットライン」は足掛け10年目になります。今回は、開設の翌2008年、2011年、2015年のデータをまとめました。相談件数はグラフに見るように推移し、この8年半で3,091件に上っています。

ホットライン統計グラフ201602

この間一貫して目ざしてきたのは、第一に、相談員が相談者に敬意を持って相談の内容をよく傾聴し、理解に努め、勝手に判断しないこと。必要な情報について、リスク、メリット、デメリットも含めて伝え、相談者が自ら職場で選択しサバイバルできるように情報提供することです。
第二には、社会の問題がいち早く集まってくるホットラインの相談をデータ化して、現場からの視点で社会に発信していくことです。
一については、相談態勢と質の充実を目指して始めた「相談員トレーニング」(サポートハウスじょむ共催)を2007年より毎年開講してきました。2012年から開催してきた「ホットラインふりかえりの会」を2015年には3か月ごとに定例化しました。参加が難しい拠点にも報告し、共通の姿勢でホットラインを受けられるよう努めています。今後も相談分析をていねいに行い、相談を受ける人も相談をする人も安心してエンパワメントできるように、「ホットラインふりかえりの会」や「グループスーパービジョン」を拡充する必要があります。
二については、これまで、労働契約法、パート法、派遣問題、マタハラ問題で女性労働弁護団等と協力して集中ホットラインを行い、社会問題としてキャンペーンを展開するよう試みました。また、マタニティハラスメントの集中ホットラインがきっかけになって当事者のネットワークも作られ、微力ながらホットラインも貢献したのではないかと思います。しかし、問題の宝庫である相談データやケースを分析し、提言を出していくことは十分ではなく、今後力を入れたいところです。

相談拠点は全国各地の15グループで始まりましたが、それぞれの活動が広がって忙しくなるなどのため、今は東京・大阪・福岡・新潟の4グループで受けています。

ホットラインが周知されて利用が増えるほど、課題は山積しています。無料ダイヤルの維持費の工面、トレーニングを修了したメンバーを新しく相談員に迎えるなど相談員を増やすこと、担当グループ・地域を増やすこと、紹介先リストの更新や労働問題に関わる最新情報の共有、他団体との連携、ロビイングや発信、相談員の疲弊を防ぐなどなど。相談員トレーニングやフォローアップの機会を、東京以外の地域で開催することも課題です。

■データから見えるもの

・雇用形態は厚労省のデータ割合と同じです。これを見ても非正規雇用が増え続けており、正社員が標準労働モデルではないのは明らかです。非正規では「短時間パート」が一番多くなっています。穴埋め要員としてますます労務・時間管理も厳しくなる一方、それだけでは食べていけない不安定な生活があります。登録派遣の数も多くなっています。

・勤続年数は1年未満の人が増え、短期化しています。2010年の雇用保険のパート適用(週20時間以上、31日以上の勤務)で適用者が拡大する一方で週19時間など適用逃れの細切れ雇用が急増していることが相談内容からうかがえます。

・相談者の年齢は、2008年は30代が最多でしたが、2011年、2015年は40代が最多となっています。2015年は50代が増えました。

・職種としては一般事務職が多く、企業にとっては重要ななくてはならない職種ですが、その分野の労働相談の分析も必要です。派遣法「改正」で専門26業務として働いていた女性の多くが一般事務職であり、誰でもできる専門性の低い仕事と不当に低く評価されているのが現状です。

・相談内容では、「人間関係」の相談がこの間連続して最も多くなっています。厚生労働省でも、「パワーハラスメント」の定義がされました。しかし、背景になっている労働法制の規制緩和による長時間労働化、低賃金化、不安定雇用化など、多くの要因について、きちんと分析されていないのが現状です、
同じ仕事をしている同僚間の関係がぎくしゃくするのは、雇用形態の複雑化(非正規雇用の増加)から権限や労働条件が違い、本人の意識や努力を超えた構造から生じることも大きいです。余裕のない職場で日々不満や怖れを抱えながら、根っこにある問題に一人で向き合っていくのはとても難しい。上司の「暴言」や「いじめその他」の相談では、十分な研修もなく中間管理職になって締めつけられている「上司の労働問題」を感じることも多いです。職場の「人間関係」の問題は「労働問題」です。
労働条件やセクハラの相談が相対的に減っています。細切れ雇用では労働条件の改善に取り組む環境もなく、取り組みを支える人間関係を作っていく年月も持てない構造があります。人間としての生活を維持するために必要な最低限の収入、生活時間、人との関係も保てない!!という苦しさや不満、不安の相談がとても増えています。相談項目は主訴のデータですが、背景に障害や病気を抱えていて、取り組みもままならない状況での相談も増えています。4月からは、障碍者雇用促進法も施行されます。安定雇用のない中で人間関係の構築を自分の努力だけで行うのは困難です。

ACW2としてはホットライン維持のための財政再建とあわせて、中長期ビジョンを踏まえて、ホットラインの相談ひとつ一つの声を生かす活動が求められています。

働く者に完寒風吹きすさぶ時代。安心安全なセーフティネットの一つとして、継続のために力を尽くしてまいります。今後ともご協力、見守りを、よろしくお願い申し上げます。

2016年2月21日

ACW2運営委員会

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